人事制度と資格

 私の会社だけではなく、社員の取得する資格の価値について、本当に理解している人事担当者は少ないように感じます。資格に対する待遇や人事制度自体もまたしかりです。そんな人事担当者の方に、私から願いを込めたメッセージです。

報奨金は一時金で支給するか?月払いで支給するか?

 最近は一時金で支給する会社が増えているようですが、私もその流れには大賛成です。理由としては資格を取得してから、その資格の価値自体は落ちていくものだと考えるからです。資産でいう減価償却のような考えです。
 一度取った資格に対して、それ以降月額で給料に上乗せし続けるのは人事制度の怠慢です。少なくとも、毎月●●円×●●ヶ月など期限を設けるべきです。


再認定制度の設立を!

 例えば昔の情報処理技術者試験の区分で、「第1種情報処理技術者」があります。この区分は、その後多少の出題範囲と内容を変えながら、「ソフトウェア開発技術者」となり、今日では「応用情報技術者」となっています。  試験センターの説明からも、これらは継承関係にあるのは明白ですが、これらを同じ試験と見るのは間違っている気がします。同じと見なすには、あまりに求められる知識の内容が移り変わってしまっています。

 私の会社がそうなのですが、旧第1種情報処理技術者の合格者は、応用情報技術者に合格しても報奨金は支給されません。私には、この考えが正しいとは思えません。

 私としては、先に述べた通り、会社として社員の持つ資格に対して期限を定めて、期限切れの資格の再取得を推奨し、再度報奨金を支給すべきだと考えています。  そんな制度でないと、勉強に貪欲でない管理職を増やすことになると思います。


報奨金の額について

 色々な考え方もあり、原資の都合もあると思いますが、最低限下記の合計額を越えてもらわないと、合格しても赤字では社員も受験意欲が落ちます。
  • テキスト代(1冊分)
  • 受験料(2回分)
  • 真の意味の報奨金分


評価制度との連携について

 私としては、資格取得に対して一時金という形で酬いて、半期や通期の人事評価では考慮しない方法を推奨します。その理由は、資格を持っている人は割と数を持っていて、その逆の人は全く持っていないという二極化の傾向があるからです。
 一時金で酬いていれば、評価を二重にする必要はありません。資格を持っている人の過剰評価に繋がってしまいます。


どんな資格を報奨金支給の対象にするか?

 支給の対象を決める場合には、部署ごとに求められる知識が違うため、最大限現場の意見を尊重してください。また、そのメンバーは管理職で固めるのではなく、私のような有識者(資格に限ってですが…)を混ぜてください。
 私の会社ではそれがされておらず、人事+管理職で資格に対する取り決めが行なわれています。申し訳ないですが、私から見たら「素人会議」です。 ただし、有識者は自分に有利な方向に話を持っていく傾向があるため、注意が必要です。


研修・教育制度について

 一般的に各社の資格教育、研修は減る方向にあり、あってもアウトソーシング(外部委託)という形式が多いと思います。私も、この傾向は受け入れざるを得ないものだと認識しています。
 また、頑張って自社内で資格教育を実施しても、合格率を10%上げる程度の効果しか見込めないと思います。では、会社として全く資格取得をサポートしなくてもよいかと言うと、それもあり得ない話で、入社を希望する学生からは、教育に力を入れていない会社だと見なされてしまいます。結果として、資格の教育に対してどう考え、会社としてどんなスタンスでサポートしているのかを示すのが重要です。
 例えば、学生から「(資格取得に対する)教育制度は?」と質問を受けた時に、下記のように答えられれば、「教育制度がないこと」をプラスの材料に印象付けられます。

 「当社は一律な教育をしていません。それは社員1人1人に求められる資質は違いますし、なにより社員1人1人の目標は同じではありません。そのため当社では、合格後の一時金という形で、社員に報奨金を支給しています。」


資格取得者を増やすには

 先に、必ずしも研修は必要ないことを述べました。この考えは変わりません。では、資格取得者を増やすには、どうするべきでしょうか?その答えが「報奨金を莫大な額に」では、あまりにも答えになりません。
 恐らく色々な答えがあると思いますが、私が有効だと考える策は、「資格取得を目標にできる環境を整えること」です。その具体的な方策として、「誰がどんな資格を持っているかを、皆の見えるところに貼り出すこと」が挙げられます。その効果の例としては、
  • 新人が取得すべき資格の目安を見つけやすい
  • 既に名前が貼り出されている人は、周りに再度「すごい」と言わせるために別の資格の取得を試みる
  • 尊敬する先輩の持っている資格を目標にする
  • 他の人があまり持っていない資格を狙い、出し抜くきっかけにする
 もちろん上記のような理想のサイクルはすぐには生まれませんし、そう大きくなるものでもありません。 人事という立場に立たされている以上、まずは環境を作ることを優先に考えてください。  少なからず、資格取得者が多いことは会社にとってプラス材料であることを再認識してください。


まとめ

 色々書いてしまいましたが、もし自分の会社の資格の待遇について見直す機会があれば、なるべく色々な立場の方の話を聞いてください。
 メールを頂ければ、私も外部の立場からアドバイスさせて頂きます。



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