管理職にとっての資格

部下の資格取得に対する考え方

 部下が資格取得をした場合、業務に関係のある資格であれば、何かしらの形で、資格取得の報告を受けることがあると思います。この時に取る対応として、一番正しいのは「おめでとうと言う」「内容について少し触れる(質問する)」「感心する」ということだと思います。例を挙げてみます。
部下 : ○○課長、先日「プロジェクトマネージャ」の試験に合格しました。
上司 : お!本当に!?合格おめでとう。
部下 : ありがとうございます。
上司 : 午後の論文は何を題材にしたの?対策もしっかりやったのかな?
部下 : 進捗管理を題材に昨年担当したプロジェクトを想定して、論文を練習しました。
上司 : そうか、きちんとやっているんだね。次も何か目指して頑張って!

 資格取得を報告する部下にしてみれば、上司から評価されることをどこかで期待しています。その期待に応えることが、上司としての務めなのです。次に1つ悪い例をあげましょう。
部下 : ○○課長、先日「プロジェクトマネージャ」の試験に合格しました。
上司 : お!本当に!?合格おめでとう。
部下 : ありがとうございます。
上司 : それってどんな資格?
部下 : 情報処理技術者試験の1つで、名の通りプロジェクトマネジメントの知識を問うものです。
上司 : で?会社からは一時金をいくらもらえるの?
部下 : ○○万円です。
上司 : え!?そんなに!?プロジェクトマネジメントなら分かるし、俺も受けようかな。

 部下はどんな感想を持つでしょうか?恐らく、「資格の内容を知らなかったこと」「受ければ簡単に合格できるように思われたこと」 を悲観するでしょう。また、上司としての評価も下がるでしょう。もしも、部下の取った資格の内容が分からない場合は、資格の内容を掘り下げるのではなく、勉強した事実を掘り下げて、褒めるようにしましょう。例を挙げます。
部下 : ○○課長、先日「プロジェクトマネージャ」の試験に合格しました。
上司 : お!本当に!?合格おめでとう。(やばい…知らない資格だ)
部下 : ありがとうございます。
上司 : 結構勉強したの?
部下 : そうでもないです。毎日30分くらいです。
上司 : いや、でも、毎日続けることが重要だし、そこが一番難しいんだよ。


自分の資格取得に対する考え方

 管理職の方から資格取得に対してよく聞くセリフは、「俺にはもう無理だ」というリタイア宣言です。
 「昔の知識しかないから、最新の情報処理技術者試験を受けても合格できない。」「管理ばかりしているから、もう勉強の仕方を忘れた。」などという説明つきですが、私には敗北宣言にしか聞こえません。
 つまり管理という業務に携わり、多くの仕事をこなせるようになり、そこそこ給料も上がったことに甘えて、勉強を止めてしまったようにしか思えません。本当に勉強をしている管理職は役員になっても、勉強をしています。実際私の元上司(役員)にも、到底私が及ばない勉強をされている方がいます。
 管理職だから勉強しないというのは、思っていても決して部下の前で口にしてはいけません。


部下を頼る

 管理職が知識を持っていることはいいことですが、現実的に見て全ての分野において、部下の持つ知識を超えることは不可能です。部下にもそれぞれ得意な分野があり、持っている知識が違います。上司としてではなく、1社員として分からないことは、積極的に部下にも質問すべきです。その際に、資格を指標にして質問する部下を決めると、いい刺激を与えられることがあります。例を挙げます。
上司 : ××くん、確か情報セキュリティスペシャリストの資格を持ってたよね?
部下 : あ、はい…。一応持ってますが…。
上司 : ちょっと、「SQLインジェクション」の内容を説明してくれないか?どうしても、分からなくて…
部下 : あ、はい。SQLインジェクションはシステムの入力欄に例えば「'」のような…
上司 : なるほど、さすがだね。また分からないことは、××くんに聞くわ。ありがとう!

 上司が部下に質問することは、まったく恥ずかしいことではありませんし、部下にとってみたら、上司からの質問に答えられたことで、自分が評価されているように感じます。また自分の存在を認められたようにも感じます。
 今後も、この上司からは同じような質問がくることが想定されるため、この部下は勉強をしなくてはと意識するかもしれません。
 しかし、時には部下が質問に答えられない時もあります。
上司 : ××くん、確か情報セキュリティスペシャリストの資格を持ってたよね?
部下 : あ、はい…。一応持ってますが…。
上司 : ちょっと、「SQLインジェクション」の内容を説明してくれないか?どうしても、分からなくて…
部下 : あ、そんな言葉ありましたね。今すぐにご説明と言われても…
上司 : そうか…。じゃあ△△さんに聞くからいいや。ありがとう。

 よくあるようなやりとりですが、この部下にしてみたら、評価されるチャンスを逃したこと、自分の持っている資格の価値を下げてしまったことで、モチベーションは低下するでしょう。部下が答えられない場合でも、急ぎでなければ猶予を与えてあげましょう。

上司 : ××くん、確か情報セキュリティスペシャリストの資格を持ってたよね?
部下 : あ、はい…。一応持ってますが…。
上司 : ちょっと、「SQLインジェクション」の内容を説明してくれないか?どうしても、分からなくて…
部下 : あ、そんな言葉ありましたね。今すぐにご説明と言われても…
上司 : そうか…。じゃあ後でいいから、調べて教えてくれる?

 この部下は、急いで調べるでしょうし、この調べた知識は、よほどのことがない限り忘れないでしょう。



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